読書はりねずみの生活

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「友だち幻想」の読書感想|人付き合いに疲れたあなたへ贈る“心をラクにする処方箋”

友達幻想表紙イメージ

友達幻想

「みんなと仲良く」は呪いなのか?

あなたはこんなふうに感じたことはありませんか?

  • 「友達とは、常に仲良くしなきゃいけない」

  • 「相手の期待に応えられない自分は、冷たい人間なんじゃないか」

  • 「会いたくないけど断ると関係が壊れそうで怖い」

こうした悩みを抱えながら、日々、人間関係に気を配り、神経をすり減らして生きている人は少なくないはずです。

少なからず私自身も、そんなことを感じている一人でした。

表向きは人とうまく付き合っているように見えても、本当は、集団の中にいるときほど「一人になりたい」という気持ちが強くなる。

けれど、それを言葉にするのは勇気が要ります。

「人付き合いが苦手」と公言することは、社会生活を送るうえで、どこかタブー視されているようにも思えるからです。

そんな私にとって、菅野仁さんの『友だち幻想―人と人の〈つながり〉を考える』は、まさに心の処方箋となる一冊でした。

「人間関係は義務ではない」「友達とはこうあるべき、という“幻想”に縛られなくてもいい」

本書に流れる静かなメッセージは、息苦しさを感じていた気持ちを、そっと解きほぐしてくれたのです。

この読書感想では、「人付き合いに悩むすべての人に寄り添う本」としての『友だち幻想』の魅力を、私自身の実感を交えてお伝えしていきます。

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『友だち幻想』とはどんな本か?

著者の菅野仁さんは、教育学者であり高校教師としても多くの若者と関わってきた人物です。

本書は、元々は高校生向けに書かれたものでありながら、大人にこそ響く言葉が詰まっています。

特に印象的なのは、表紙の帯に書かれたこの言葉。

「人付き合いが大変なこの時代に効く処方箋」

SNSをはじめ、つながり続けることが前提となった現代社会。

人間関係のストレスを抱える人が増えるなかで、この本は「人と人との適切な距離感」を見直すヒントを与えてくれます。

お笑い芸人であり作家でもある又吉直樹さんがテレビで紹介したことでも話題となり、多くの人の共感を呼びました。

自分を見失わないための「距離感」の大切さ

仕事の性質上でいろいろな人と接し、会話もしている自分がいます。

そんな自分は周囲からみればうまくコミュニケーションが取れる人と見えているかもしれません。

でも実際はそんなことはありません。(本人が一番よくわかっています)

できれば早く一人になりたい。

多くの人といる場面から離れて、できるだけ早く家に帰りたいという気持ちがいつも生じます。

本書を通して繰り返し伝えられるのは、「友達だからといって、なんでも共有する必要はない」という考え方です。

これは、一見すると冷たいように思われるかもしれません。

けれど、実はそれが健全な人間関係を長続きさせるためのポイントなのです。

私たちは、「一度友達になったらずっと仲良くしなければいけない」という思い込みにとらわれがちです。

しかし現実には、価値観の違いや生活環境の変化によって、関係性が揺らぐことは誰にでもあります。

本書はそうした現実を肯定し、「変わっていい」「離れてもいい」「無理に関係をつなぎとめなくてもいい」と教えてくれます。

「人付き合いが苦手な自分」を受け入れること

ここ数年のコロナの状態で一層人との交流に抵抗を感じるようになってしまった人もいるのではないかと想像します。

私はもともと、話すことが得意ではありません。

集団の中にいると、いつも気を使いすぎてしまい、後からどっと疲れるタイプです。

仕事上では多くの人と接する場面があるものの、プライベートでは極力一人で過ごしたい。

誰にも気を使わずに本を読んだり、静かな場所で過ごす時間がなにより好きです。

けれど、そんな自分にずっと罪悪感を持っていました。

「もっと社交的にならなければ」
「話がうまくできない自分は、大人として欠けているのではないか」

そう思って、自分を責める気持ちが抜けなかったのです。

そんなときにこの本と出会い、「人との適切な距離感は、自分自身が決めていい」と書かれていたことに、救われたような気持ちになりました。

「同調圧力」に疲れてしまった人へ

一時期はコロナ禍によって人との距離感を見直す機会が増えました。

リアルな付き合いが減った一方で、オンラインやSNSでの交流はかえって密になったようにも思えます。

誰かの投稿を見て、反応しなきゃと思ってしまう。

返信が遅れると「嫌われたかな」と不安になる。

つながりすぎて、苦しくなる―。

『友だち幻想』は、そんな「同調圧力」のような空気に警鐘を鳴らします。

人との交流は、“義務”ではなく“選択”であるべきだ。

自分が無理なく、自然体で関われる範囲で関係を築いていく。

そのスタンスこそが、長く穏やかに人と付き合う秘訣だと、私はこの本から学びました。

「人は人、自分は自分」でいい

本書でとくに印象的だったのは、こんな一節です。

「人は人、自分は自分と割り切ることで、むしろ優しくなれる」

自分と異なる価値観の人を否定せず、受け入れようとする。

そのためには、まず自分の輪郭をはっきりさせることが必要です。

無理に誰かに合わせようとすると、知らないうちに自分がすり減ってしまう。

でも、自分を大切にしている人こそ、他人にも寛容になれる。

この考え方は、人付き合いに苦手意識をもつ私にとって、大きな指針となりました。

「友だち幻想」を手放すことは、孤独になることではない

「友だち幻想」と聞くと、なにか大切なものを失ってしまうような、寂しさや虚しさを感じるかもしれません。

まるで「友達なんていらない」と突き放すような響きさえあるかもしれません。

ですが、本書で語られている“幻想”とは、「友達とはこうあるべきだ」「人間関係は深く濃いものでなければならない」といった私たち自身が無意識に作り上げてきた理想像のことなのです。

つまり、「幻想を手放す」とは、自分の心に嘘をつきながら誰かと関わることをやめるということに他なりません。

・無理に連絡を取り合わなくてもいい

・何でもかんでも本音を打ち明ける必要はない

・一緒にいない時間があっても、関係は切れない

こうした“余白”のある関係こそ、本当は一番心地よいのだと、この本は教えてくれます。

そしてもう一つ、大切なことがあります。

それは、「一人でいる時間」と「孤独」とは決して同じではないということ。

一人でいる時間は、自分を取り戻し、心の疲れを癒やし、思考を整理するために必要な時間です。

それは誰にも邪魔されない、静かで大切な場所。

周囲に合わせることを優先するあまり、その時間を手放してしまうと、やがて心が摩耗してしまいます。

『友だち幻想』を読み終えて感じたのは、むしろ幻想を手放したその先にこそ、“本物のつながり”が見えてくるのではないかということでした。

本音をさらけ出さなくても、無理に同調しなくても、静かに心が通い合う関係がある。

そうした関係性を築いていくためには、まず自分自身を大切にすることが第一歩なのだと気づかされました。

おわりに|人間関係に悩むすべての人へ

人間関係は、人生のあらゆる場面に深く関わってきます。

職場、学校、地域、家族、友人―。

誰もが多かれ少なかれ、どこかで“人とどう付き合うべきか”に悩んだ経験があるはずです。

特に現代は、SNSの普及により「いつでも誰かとつながっていなければいけない」という空気が強まっています。

既読スルーに気を遣い、頻繁なやりとりを求められ、ふとしたことで“関係が壊れるかも”という不安に襲われる。

人との距離が近づいたことで、かえって孤独を感じやすくなっているのが今の時代なのかもしれません。

そんな時代に、『友だち幻想』は、私たちにこう語りかけます。

「つながらなくてもいいんだよ」
「人間関係に“正解”はないんだよ」
「あなたがあなたでいることを、大切にしていいんだよ」

この本を読んで思ったのは、人と付き合うための“テクニック”や“処世術”ではなく、“ありのままの自分を肯定する視点”を与えてくれる一冊だということです。

もともと人付き合いに自信がない私にとって、本書の言葉は、押し付けでも説教でもなく、やさしい肯定と理解で満ちていました。

もしあなたが今、誰かとの関係に疲れているのなら、「無理をしなくていい」と言ってくれるこの本に、ぜひ触れてみてください。

少しだけ、心が軽くなるかもしれません。

そして、自分にとって本当に大切な“つながり”とは何か、見つめ直すきっかけになるはずです。

あなたがあなたらしく、しなやかに生きていくために。

『友だち幻想』は、そっと背中を押してくれる存在になるでしょう。

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