例えば、自分が引っ越してきたお部屋に、前住人の残したものがあったらどう思うでしょうか?
そして残されたものがその方の生活や考え方を克明に記録したノートであったら・・・
自室のクローゼットで見つけたノート。
それが開かれたとき、私の日常は大きく変わりはじめる――。
そんな素敵な偶然が一人の人間の人生の支えになるようなお話です。
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■残されていたノート
このお話の主人公の堀井香恵は引っ越し先の自室のクローゼットの中に、前の住人が置き忘れたノートを発見します。
もし、現実にこのようなことがあったら、どうでしょう?
大抵の人は気持ちが悪くて手を付けないのかと思いますが、このお話のノートに綴られた内容はとても素直に受け入れられるような誠実な内容でした。
そのノートに書かれた内容は、とある小学校の先生が自分の日常生活を語ったものでした。
特に受け持った子供たちに対しての先生としての思いなど、ノートの持ち主の優しい性格がとても感じることができるものでした。
人の日常生活を除くことは少し抵抗があったのかもしれませんが、香恵はその内容を読み進めていくことになります。
■ノートに支えられていく人生
香恵はその内容に引き込まれながら、自分自身の日常を照らし合わせていきます。
香恵は文具店でアルバイトをしている大学生でした。
その文具店の万年筆売り場で、一人の男性と出合うことになります。
その男性との間の気持ちのやりとり、香恵を取り巻く様々な人たちの考えに時には悩み、くじけながらも、ノートに書かれた内容に支えられていきます。
男性が自分の納得する万年筆を手にするまでの香恵とのやりとりが非常に印象的でした。装丁に万年筆が描かれているのも納得しました。
最後はノートの内容から意外な事実につながります。
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■感想
全体を通じてとても気持ちがリラックスする内容だったと感じました。
読み終わると、なんだか自分も万年筆を手にしてみたくなるような気持になります。
雫井さんの作品は以前に読ませていただきましたが、ミステリー以外にも、このような作品もあるのだと意外な発見でした。
自分にとってお気に入りの作品になりました。
このお話は映画も発表されているのですが、今では諸事情のある女優さんがお二人出ているということもあり、なかなか手が伸ばせないですが、いつかは見てみたいと思っています。
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