読書はりねずみの生活

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『人形館の殺人』感想レビュー|綾辻行人の館シリーズ第4作、異色の舞台と不気味なマネキンの謎

人形館の殺人表紙イメージ

人形館の殺人 新装改訂版

“人形たちが見つめる館”で起こる、連続殺人と過去の因縁——。日常と非日常が交錯する恐怖が、静かに始まる。

綾辻行人の『館シリーズ』第4作にあたる『人形館の殺人』は、これまでの「孤島」や「山奥」など隔絶された空間を舞台にしてきた前作とは異なり、京都という日常に近い都市を舞台とした異色の作品です。

しかし、その“普通さ”が逆に、物語全体に不気味な緊張感を漂わせています。

主人公・飛龍想一(ひりゅうそういち)は、育ての母である叔母とともに、亡き父・飛龍高洋が遺した屋敷「緑影荘」へと引っ越します。

そこは地元では“人形館”と呼ばれ、至るところに部品の欠けたマネキンが配置されている、どこか不気味な館。

そしてその別棟の洋館には、“あの”中村青司が設計に関与したという噂まで。

引っ越し直後から起こる通り魔事件、不気味な手紙、謎めいた住人たち、そして……死。

想一の身に降りかかる一連の怪事件に、大学時代の友人である島田潔が静かに登場し、物語は加速していきます。

『十角館の殺人』『水車館の殺人』『迷路館の殺人』と続くシリーズの流れを汲みながらも、『人形館の殺人』では綾辻作品の中でも特に“心理”と“過去”に焦点が当てられています。

“人形館”に秘められた驚愕の真実にたどり着けるでしょうか?

本記事では、この作品の魅力、登場人物の考察、そして前作までとの違いについて、ネタバレを避けつつ丁寧に感想を綴っていきます。

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■館シリーズでは異色の内容

今日との街並みイメージ

人形館の殺人は「館シリーズ」の第4弾で(1989年4月)に発表されています。

館シリーズはどの順番で読むべきですか?

という質問をよく耳にしますが、以下が順当なところでしょう。

私の場合には前後してしまっているものもありますが・・・・

1.十角館の殺人
2.水車館の殺人
3.迷路館の殺人
4.人形館の殺人
5.時計館の殺人
6.黒猫館の殺人
7.暗黒館の殺人
8.びっくり館の殺人

人形館の殺人を4番目に読んでいただくと恐らく気が付くと思いますが、この人形館の殺人のストーリーは前作の「十角館」、「水車館」、「迷路館」の3作とは少し様相が異なった雰囲気になっています。

〇〇館というのは、たいていは人里離れたところに建てられた、いわゆる孤立した感覚が常にあるものでしたが、今回の人形館は京都の町中に普通に存在している館という設定になっています。

日常の中で進むストーリーという感じがして、私個人の感想としては江戸川乱歩風という感じでしょうか。

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■中村青司と島田潔の人物像

中村青司と島田潔イメージ

館シリーズには必ず出てくる人物が中村青司と島田潔の2人です。

それぞれの人物像について少し調査しました。

 

【中村青司(なかむらせいじ)】
もちろん架空の人物です。

優れた建築家として知られると同時に、きわめて異端な存在。

中村青司の手掛けた館には、必ず「なにかしらの隠し部屋・隠し通路・隠しギミック」などが設置されています。

それが要因となって、シリーズを通して数々の連続殺人事件が起こっています。

46歳の若さで死亡しています。

奥さんに対してとても執着心があるなど、周りからは変わり者と思われていたようですね。

イメージとしてネット上ではとてもイケメンな画像がありましたが、私のイメージはお堅いおっさん像です。

 

【島田潔(しまだきよし)】

こちらも架空の人物です。

大分県のとある寺の三男です。

仏教系の大学を卒業後は定職につかず実家の手伝いをしながら30代後半まで各地を放浪。

イメージ描写として浅黒い顔に落ち窪んだ目、鷲鼻とあります。

中村青司の手がけた館にとても関心をもっています。

その中村青司の弟である紅次郎は、大学生時代の先輩に当たるそうです。

兄が2人いて、そのひとりは犯罪心理学者、もうひとりは大分県警警部という感じなので、自然と犯罪にも関わることも多いのでしょうか?

禁煙(節煙?)しているらしく、「今日の一本」と言いながら喫煙するシーンは有名。

 

■人形館の意味と真実に驚きが隠せません

考える読書イメージ

主人公である飛龍想一の目線中心でストーリーは展開されていきます。

彼が子供のころに引き起こした事件、事故の内容と、それに関連する人々の思い。

人形館に隠された秘密は?

想一を狙う次々に起こる殺人事件・・・

そして島田潔、架場久茂(かけばひさしげ)など想一を支える人物の動きなどを注意深く読むことで、最後の真実に驚くことになるのです。

前作の「十角館」、「水車館」、「迷路館」の3作を読んでいるからこそ驚いてしまうトリック・・・ 

読者の心理をうまく利用していると感じます。

これが綾辻ワールドなのだと個人的には思います。

でも綾辻先生はもともと館シリーズはこの人形館の殺人を異色の作品とすることで、全体を4部作として終了させることを考えていたそうですね。意外でした。

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■旧版と新装改定版の違い——装丁・レイアウト・読後感も変わる?

『人形館の殺人』には、初期に刊行された旧版(講談社文庫)と、その後に刊行された新装改定版の2種類があります。

すでに旧版を読んだ方にとっても、新装改定版はまた違った魅力を感じさせてくれる存在です。

装丁比較イメージ

装丁比較

まず目を引くのが装丁デザインの違い。

旧版はシンプルで重厚感のある雰囲気をまとっており、「いかにも本格ミステリらしい」落ち着いた印象。

一方、新装改定版は、近年の若い読者層も意識したスタイリッシュなデザインが特徴で、表紙を見ただけで「この館には何かある」と感じさせる工夫が凝らされています。

また、新装版では文字のサイズや行間、ページのレイアウトが読みやすく改められており、長時間の読書でも疲れにくいというメリットも。

綾辻作品にありがちな「ページをめくった瞬間に読者を驚かせる」演出——たとえば『十角館の殺人』でのあの衝撃の一言——のような工夫も、より際立つように構成が調整されています。

『人形館の殺人』においても、新装版では読後の印象が微妙に変わるかもしれません。

物語の雰囲気そのものは同じでも、「読む体験」の質が変わるのは間違いありません。

すでに旧版で読了している方も、あらためて新装改定版を手に取ってみることで、異なる読後感や新たな発見があるかもしれません。

装丁の違いや紙質の手触りといった「本そのものの魅力」も含めて、読み比べてみる価値は十分にある一冊です。

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