奥多摩分署管内で、全裸美女冷凍殺人事件が発生した。
被害者の左胸には柳の葉のような傷があった。
2週間後に刑事を辞職する真壁修はその事実に激しく動揺する。
その印は亡き妻にあった痣と酷似していたからだ。
何かの予兆なのか?
真壁を引き止めるかのように、次々と起きる残虐な事件。
妻を殺した犯人は死んだはずなのに・・・・
過去と現在が交差し、戦慄の真相が明らかに!
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■伊岡瞬プロフィール
1960年、東京都生まれ。
広告会社勤務を経て、2005年『いつか、虹の向こうへ』で第25回横溝正史ミステリ大賞とテレビ東京賞をW受賞しデビュー。
2016年『代償』で啓文堂書店文庫大賞を獲得し、同書は52万部を超えるベストセラーとなる。
他の著書に『瑠璃の雫』『教室に雨は降らない』『痣』『悪寒』『本性』『冷たい檻』『不審者』『赤い砂』など
■あらすじ
主人公である真壁刑事は以前に妻を殺害されており、その容疑者も捜査の途中で死亡しています。
気力を失った真壁は、近く刑事を辞める決心をしていました。
しかし、それをあざ笑うかのように次々と引き起こされる殺人事件が・・・・
それらの殺人事件の遺体に残された傷(痣)が妻の殺害時に残されていた状況と酷似していることから、なんらかの関連性を見出そうとして真壁は再び捜査を進めます。
やがて、世間を震撼させた「ある事件」にたどり着き、そこに関わる人々の背景、そして妻の殺害へのつながりを知ることになります。
「痣」という共通点に真壁刑事がこだわらなければ、この一連の事件は決着していなかったと言えます。
■警察小説の印象
普段は推理小説中心に読んでるため、警察小説を読むのは久しぶりのことでした。
推測でストーリーが進む推理小説に比べ、警察小説は刑事が捜査を粘り強く進めるたびに、ひとつずつ事実が判明していき、状況が進展していくという面白さがあります。
現実の捜査活動も恐らくそうなのだろうと想像しますが、非常に泥臭い聞き込みや書類調査など、地道な活動がひとつの解決への光になるという世界観なのだと感じます。
刑事も労働をしていると考えると、その労働条件もひどく、事件解決へ向けて何よりも優先して仕事をしているという印象でした。
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■真壁と宮下のコンビ
真壁刑事とともに捜査活動をしていた宮下刑事は非常に好感の持てるキャラクターでしたね。
真壁がふと思い立ったことを迅速に調査し、事実を解明していく姿勢や警察関係の人々についての感想を漏らす姿。
そして時々真壁と2人で食事をするシーンがあるのですが、元気な大食漢というイメージがあるところ。
真壁のことを尊敬し、事件解決に向けて懸命に動こうとする姿が非常に良かったと思います。
宮下刑事との掛け合いがあるからこそ、全体のストーリーがすんなりと入ってきた感じもします。
人嫌いの真壁も最後には宮下のことをパートナーとして認めているほどです。
■真壁刑事シリーズ
この真壁、宮下両刑事のコンビは、伊岡先生の他の作品「悪寒」「本性」にも登場してきます。
真壁刑事のシリーズとして、作品を読む順番としては以下が推奨されています。
①代償 ②痣 ③悪寒 ④本性
もちろん強要することでもありませんし、どんな順番で読んでもそれぞれの作品はとてもおもしろいので問題ありません。
でも私自身は、③①④②の順番だったので、上記の順番で読んで、しかも真壁刑事を意識していたら個人的にはもっと楽しめていたのかもしれません!
■伊岡先生の作品群メモ
私は文庫本で作品を楽しむ派なのですが、伊岡先生の作品の特徴の一つとして、文庫化される際によく「改題」がされるということです。
作品群の中では以下が該当します。
『七月のクリスマスカード』→『瑠璃の雫』
『明日の雨は。』→『教室に雨は降らない』
『桜の咲かない季節』→『桜の花が散る前に』
『ひとりぼっちのあいつ』→『祈り』
内容は同じなのですが、題名が異なるということから、単行本も入手しておくというのも伊岡瞬のファンであればもちろんありかなと感じますね。
■感想(まとめ)
今回は、警察小説の楽しさを改めて知ることができました。
刑事も人間です。一人ひとりの生活や人生における背景を抱えてもいます。
そんな中で懸命な捜査活動で真実を追求するというプロの意識を十分に感じさせてくれました。
読み進めると本当に止まらないほど面白い内容です。
是非お勧めですね!
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