せどり”(背取、競取)とは、古書業界の用語で、掘り出し物を探しては、安く買ったその本を他の古書店に高く転売することを業とする人を言います。
せどり男爵こと笠井菊哉(かさいきくや)氏が出会う事件の数々。古書の世界に魅入られた人間たちを描く傑作ミステリーです。
この本のことを知ったのは、ビブリア古書堂の事件手帳のドラマを通じてでした。
ドラマのあるシーンで、笠井菊哉と言う役名の人物が登場します。
その人に向かって、せどり屋の志田さんが「おまえ男爵か!」と嬉しそうに話す場面があります。
実際にはその笠井菊哉はとんでもない人物だったのですが…
その場面がきっかけでどんな話なのかが気になり、紐解いて入手し拝読しました。
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■せどり
「古書店などで安く売っている本を買い、他の古書店などに高く売って利ざやを稼ぐ」こと、またはそれをする者を指します。
同業者の店頭から高値で転売する事を目的に「抜き買い」するため、せどり行為は業界内では嫌われているようです。
一方、本の希少価値にこだわらない、大量仕入れ、大量販売形式の大規模古書店においては(ブックオフなどですかね)、「一度に数十から100冊の本を買ってもらえる」「長期在庫が減る」ということから、せどりが必ずしも嫌われているわけではないようですね。
最近ではブックオフなどでもスマホ片手に本を物色している方を見たりしますが、せどり活動をしているのでしょうか?
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■せどり男爵のお話
内容としては古書に関わるエピソードが6編に渡って綴られています。
それぞれの題名が麻雀の役名に絡めているようでした(私は麻雀がよくわからないのですが・・・)
私が古書について関心を持つようになったのは、ビブリア古書堂の事件手帳を読んでからなのですが、そのお話のなかでも笠井菊哉はある古書をどうしても入手したいという思いで、あらゆる手段を尽くします。
そのアプローチがだんだんエスカレートしてきて、最終的には稀覯本の持ち主に害を与えることまでしてしまいます・・・
「せどり男爵数奇譚」の中ではそこまで卑劣なことはしないのですが、それでも古書に対する執念はすごく伝わってくる内容でした。
古書マニアはその本の内容と言うよりも本そのものに価値を見出し、あたかも美術品のごとく扱う感じがして…自分の本好きという感覚とは大きく異なる世界だということも分かりました。
最終章だけ狂気のエピソードとなっていてちょっと引いてしまいましたが・・・異常なまでの稀覯本に対する執着心には恐ろしさも感じたほどです。
■古書に対しての関心が芽生える
この本だけではなく「古書」にまつわるお話は他にもたくさんあるようです。
古書にはその本がたどってきた歴史が価値として伴います。
著者にまつわるエピソードが込められていたり、時には直筆の書き込みがあったりなど、その価値は様々です。
それでなくても古書にはなんとも言えない魅力があると感じています。
今までどんな人の手を渡り歩いてきたのか?ということを考えるだけでも楽しかったりします。
この世界に関心がある方は是非読んでおいてほしい作品ですね。
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