「逆転美人」というタイトルだけでは、普段の自分自身の読書ジャンル傾向からは正直言って関心が沸かない状態でした。
しかしながら、X(旧Twitter)で読書垢さんたちの反響がとても多かったこともあり、徐々に気になり始めていました。
そしてある日書店で偶然目にしたときには、すでに手に取ってしまっていました・・・
いざ読み進めると、ある美人の人生を語った手記となっており、その内容に目が離せないくらいに自然に読み進めたくなるものでした。
美人ならではの苦労感とはこんなものなのか・・・と納得すると思いきや
お話の展開は別の局面を迎えることになります。
そしてこの本に隠された驚愕の真実が明かされることになるのです!
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■藤崎翔さんプロフィール
1985年生まれのミステリ作家で、お若いころはお笑い芸人であったようですね。おどろきました。
デビュー作は第34回の横溝正史ミステリ大賞を受賞した『神様の裏の顔』。
その他『おしい刑事』『恋するおしい刑事』などドラマ化されるほどの作品を発表されています。
この「逆転美人」の執筆と構想については、ご本人のインタビューにも語られていますが、トリックに対してのこだわりと、それに取り組んだ際の挫折感など、非常に苦労が多かったことが取り上げられています。
それだけに、今回のような注目を集める作品を発表することができたのだと思います。
藤崎さんのこだわりと努力の結果の勝利と言えますね!
■逆転美人のあらすじ
前半の手記は、美人であるがゆえにつらい人生を送ってきたという内容です。
ある意味想像していた内容と言えるのですが、その生々しい語り口は読者の目を離さないレベル感でした。
この本は、そんな手記がずっと続いていくものかと初めは思い込んでいました。
語り手の香織(仮名)は、生まれながらの美人。それ故に、幼いころから苦労を重ねてきました。
周囲の人からのねたみ、いじめなどなど、想像できることではあるものの、香織という人物の性格に照らして読むと、「かわいそうに」という気持ちになってしまうほどの内容でした。
手記の終盤で、娘の学校の教師に襲われたことが全国的に有名になり、世間の注目を集めるようになった香織は、それを機会に自らの生涯を綴った自伝的な手記としてこの「逆転美人」を出版することになるのです。
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■ある人物による追記
香織が語る本編手記は、本の中盤で終わります。
そしてその後は香織の娘の視点で、この手記の本当の意味が語られていきます。
いままでずっと読みすすめてきて、読者にも一定の決着感がついたところに、改めて娘の視点からこの手記に隠された真実が明らかにされていくのです・・・
このお話の第二局面を迎えていくことになります。
その真実を知るにつれて、新たな驚きが徐々に植え付けられ、読者が香織にいだいていたイメージがどんどん崩れていきます。
娘の立場から語られる事実は非常に重みがあり、そして究極の精神状態に陥った娘がどんな方法でそれを解消していくのかは、非常に読みごたえがある内容でした。
■この本に隠された秘密
そして、最終局面を迎えるにあたって、娘がとんでもない行動に出ます。
それは欺くべき相手を味方に巻き込んだ逆転発想でした。(何を言っているのかわからないと思いますが、本書を読んだ方には伝わると信じています)
実は前半の香織の手記を書いたゴーストライターがその娘だったのです。
でも驚くべき事実はそこではありません。
※ ※ ※
これは紙の本という特性を活かしたトリックと言えます(電子書籍では無理なのでは?と感じています)
恐らくこの本を読み進める方で、隠されたトリックに初めから気が付く人はほぼいないのではないかと思います。
でもこの娘は、きっとそれに気が付いてくれる人がいるはず!という思いでそのトリックを考え付いたのです。
前半パートの手記は、ひとりの人生の物語としてしっかりと読ませる内容となっているだけに、なおさら最後のトリックには驚きを感じさせます。
読者の引き込み感とその工夫には脱帽です。相当に楽しませていただいた1冊となりました。
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