読書-Harinezumiの生活

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【時計館の殺人】シリーズ5作目|時間概念を巧妙に活用するトリック!ネタバレ避けます

時計館の殺人表紙イメージ

長編ミステリー 時計館の殺人

綾辻行人の館シリーズとしては5作目の作品となります。

今回は鎌倉が舞台となっており、謎の建築家、中村青司が建てた不思議な館「時計屋敷」で起こる衝撃の事件です。

事件の背景には、館主とその家族や関係者にまつわるいわくつきの過去の話が関係しています。

事件解明役にはおなじみの鹿谷門実(しかやかどみ)=島田潔(しまだきよし)が登場します。

「時間」という概念を唯一見ることができる「時計」を利用した壮大なトリック。

最後は巧妙に仕掛けられた見事なトリックを解明することにより、読者の納得感と満足感を引き出してくれます。

第45回推理作家協会賞を受賞した、綾辻行人の代表傑作作品の一つです。

新装改訂版は 上下巻合わせて700ページを超える長編ですが、一気読みさせてくれるほど引き込まれるお話です。

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■あらすじ

時計館イメージ

かつて時計館でひとりの少女が死んだ。

その後、館に関わる人々に次々起こる自殺や事故、病死・・・

以前に角島(つのじま)・十角館の惨劇にも登場する江南孝明(かわみなみたかあき)は、オカルト雑誌の“取材班”の一員としてこの館を訪れます。

そしてその他にW**大学超常現象研究会の学生も数名合流し、館に棲むという少女の亡霊と接触するための交霊会を実施します。

その交霊会の夜から事件ははじまります。

過去の出来事から端を欲し、時計館を訪れた9人の男女に無差別殺人の恐怖が襲い始めるのです。

館に閉じ込められた江南たちを襲う、仮面の殺人者の恐怖。

館内で惨劇が続く一方で館外では推理作家・鹿谷門実(ししやかどみ)が、時計館主人の遺した「沈黙の女神」の詩の謎を究明します。

悪夢の三日間の後、凄絶な連続殺人の果てに待ち受ける真相とは・・・

「時間」という概念を巧妙に利用した見事なトリックが明らかになります。

 

■時間という概念のとらえ方

下巻の304ページにとても印象的なフレーズがあります。

お前にとって時間の本質とは何か、と質問されたとき、僕は考えあぐねた末、多分に自嘲的な気分でこう答えざるをえない。つまりそれは、時計の動きであると。

この機械によって初めて、僕ら現代人は「時間」を明確な形として捉えられる。僕らは時計によって時を計り、時を支配しているつもりでいるけれども、実際には逆に、時計の動きが創り出す「時間」によって肉体と精神を拘束され、支配されているのだということです。(本文より抜粋)

はっとさせられました。

確かに日常の自分の動きを振り返ってみると、時計を見てその時間によって自分がコントロールされていることに気が付かされます。

恐らく時計のない時代には、夜が明けたり、夜になったら自然とやるべきことを自身が体で感じ取って動いていたのだと思うと、時計によって支配されている生活感が非常に窮屈にも感じました。

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■綾辻行人氏の魅力

本名は内田直行(うちだなおゆき)さんといいます。

奥様は作家の小野 不由美(おの ふゆみ)さん。私も「残穢(ざんえ)」という奥様の作品を読ませていただいたことがあります。

館シリーズをはじめとして数々の作品を発表している綾辻氏ですが、X(旧Twitter)でも日常のことを頻繁につぶやく気さくな方という印象を受けます。

ネット上では綾辻氏のファンは多々お見受けするのですが、実は私の周りではほとんど話題に上がってきません。

東野圭吾さんなどで会話が弾むことはあっても、なぜか綾辻行人って知ってますか?とは今までに聞かれたことがなく、ちょっと寂しい気持ちです。

先日書店で、ある青年がこの「時計館の殺人」を手に取ってじっくりと吟味をしている場面に出くわしました。

結果、上下巻を手にとってレジに向かう姿を見て、でかした青年!と思わずエールを送ってしまいました。

 

■新装改訂版

時間イメージ

初刊が1991年に発表された「時計館の殺人」ですが、その後新装改訂版として2012年に上下巻という形で再度発表されています。

綾辻氏の解説によると、400字詰め原稿用紙で900枚超の長編になるため、上下巻に分けたとのことです。

活字が苦手という人にとって見れば、上下巻という構成に少し抵抗感をいだく人がいるかもしれないですが、それ以上に物語が面白いため、どんどん読み進めてしまいます。

登場人物もそれなりに多いのですが、読んでいるうちにすっきりとそれぞれのキャラクターがイメージとして焼き付くため、非常に読みやすいと言えます。

ミステリーの長編にチャレンジしてみようという方には本当にお勧めの作品ですね。

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