鎌倉の片隅にひっそりと佇む、小さな古書店「ビブリア古書堂」。
その美しい店主・篠川栞子さんが再び私たちの前に帰ってきました。
三上延さんによる大人気シリーズ第2巻、『ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~』では、前作から続く静かでどこかミステリアスな空気感をまといながらも、より深みのある人間模様と、古書が持つ“物語の中の物語”を堪能することができます。
私自身、この巻を読みながらまたビブリア古書堂の扉を開けることができたような気がして、心がじんわりと温かくなりました。
本記事では、そんな第2巻の魅力をたっぷりとお届けしていきます。
- ■再び開かれる古書堂の扉——栞子さんの帰還と変化
- ■4つの古書が導く、それぞれの秘密
- ■私の読書体験に新たな風をくれた古書たち
- ■ビブリア古書堂の魅力——“静かな熱量”に癒される
- ■三上延が描く“読書の魔法”と今後への期待
- ■『ビブリア古書堂2』は、本好きに贈る“優しい謎解き”
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■再び開かれる古書堂の扉——栞子さんの帰還と変化
本作は、入院していた栞子さんが無事に退院し、古書堂に戻ってくるところから始まります。
その姿を見てまず感じたのは、「少し変わったな」という印象。
以前よりも少し柔らかく、けれどまだ何かを秘めたような——そんな佇まいが印象的でした。
五浦大輔との距離も少しずつ縮まりつつあり、相変わらず口下手ながらも、二人の間には静かな信頼が生まれてきています。
どこかぎこちないけれど、穏やかに流れていく時間。
その中で、今回もまた“本”が人の人生や感情を映し出し、物語が動き出していきます。
■4つの古書が導く、それぞれの秘密
今回登場するのは、ジャンルも時代も全く異なる4冊の古書です。
坂口美千代:『クラクラ日記』
アントニー・バージェス:『時計じかけのオレンジ』
福田定一(司馬遼太郎):『名言随筆 サラリーマン』
足塚不二雄:『UTOPIA 最後の世界大戦』
いずれも、一見するとただの本に見えるかもしれません。
しかし、それぞれの本には、持ち主の想いや過去、そして隠された秘密が詰まっていました。
この4作品を通して見えてきたのは、本を通じて「人と人の関係性」や「過去と現在が交差する瞬間」を描くという、三上さんの真骨頂ともいえるテーマでした。
■私の読書体験に新たな風をくれた古書たち
ここでは、今回の4冊について、私自身の感想を交えながら紹介していきます。
『クラクラ日記』(坂口美千代)
坂口安吾の妻・美千代さんが、彼との出会いから死別までを綴った随筆。
この作品は、古書としても比較的安価で手に入るものの、なぜか手元に置きたくなる魅力があるのです。
特にビブリアの中で描かれる“装丁のかわいらしさ”に惹かれて、私はすっかり虜に。
栞子さんが読み解く過去の家族関係と共に、「想いを本に託す」人間の儚さが胸に残りました。
『時計じかけのオレンジ』(アントニー・バージェス)
映画でその名を知っている方も多いこの作品。
正直、内容的にはかなりヘビーで、なぜこれを女子高校生が感想文の題材に?という違和感を持ちながら読み進めました。
しかし、そこに秘められていたのは「理解されない孤独」と「本との出会いが与える転機」。
栞子さんがこの本に早くから目を付けていたというエピソードもまた、彼女の“本に対する感受性”を垣間見る場面でした。
『名言随筆 サラリーマン』(福田定一/司馬遼太郎)
この作品に出会って初めて、「司馬遼太郎」が「福田定一」名義でこんな随筆を残していたと知りました。
時代背景や社会の空気を映した言葉が多く、いま読むとその時代のリアルが鮮やかに浮かび上がってくるようです。
ネットで調べると、この古書は数十万円で取引されていることもあり、まさに“幻の一冊”。私も思わず「豚と薔薇」という司馬遼太郎の別作品まで調べてしまいました。
『UTOPIA 最後の世界大戦』(足塚不二雄)
ドラえもんの生みの親である藤子不二雄の初期作品。
この作品を通して、藤子作品の“原点”とでも言うべき熱量を感じました。
「手塚治虫が“手”なら、僕たちは“足”でいい」——そんな謙遜とリスペクトを込めたペンネームも印象的。
昔の漫画はどこか温かみがあり、文字通り“手で描かれた”感触が残っていて、それがまた心地よいんですよね。
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■ビブリア古書堂の魅力——“静かな熱量”に癒される
改めて感じたのは、このシリーズが持つ“静かな熱量”です。
派手な展開はなくても、人が本を通じて触れ合い、ぶつかり、許し合う姿には、何度読んでも胸が熱くなります。
鎌倉という落ち着いた土地を舞台にしているからこそ、その空気感がより濃く伝わってきます。
観光地としての喧騒ではなく、静かな住宅街の片隅にある、日常の延長線上にある古書堂。
そこに流れる時間は、読者にも「少し立ち止まって、自分のペースで本と向き合ってみませんか?」と語りかけているようでした。
■三上延が描く“読書の魔法”と今後への期待
三上延さんの魅力は、何といっても“読書そのものが物語になる”という構成力にあります。
本好きでなくとも、知らない本を知ることで世界が少し広がる。
本好きならば、さらに深く、その世界に足を踏み入れたくなる。
そして何より、栞子さんというキャラクターの奥行きが少しずつ明かされていく過程にワクワクが止まりません。
この先、彼女と大輔の関係がどう変わっていくのか、そしてどんな本が登場していくのか。既に7巻まで読んでいますが、再読しながらまた記事にしていきたいと思っています。
■『ビブリア古書堂2』は、本好きに贈る“優しい謎解き”
『ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~』は、「人の心にそっと触れるミステリ」でした。
古書に宿る秘密と、それをそっとひも解く栞子さんの姿に、読むたび癒されます。
そして、登場する本のどれもが、読後に“自分も読んでみたい”と思わせてくれる——それが何よりの魅力です。
鎌倉を舞台にした本シリーズ。
訪れたことがある方も、ない方も、きっと読後には「ビブリア古書堂を探して鎌倉を歩いてみたい」と思うはずです。
第3巻以降も、またこの場所に帰ってきたくなる。そんな“読書の旅”を、あなたも始めてみませんか?
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