館シリーズでおなじみの綾辻行人さんの作品で、以前からずっと気になっていたのですが手を付けられないままでした。
今回、直近にanotherの新シリーズが発売になったこともきっかけで、ようやく自分の気持ちも「読んでみたい」という方向になりました。
館シリーズとはまた違った雰囲気の学園ミステリーです。でもやっぱり綾辻氏独特の感じを植え付けてくれる内容でした。
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■あらすじ
1998年、春のこと。父親の海外赴任や自身の肺の病気療養のため、母親の実家に身を寄せることになった榊原恒一は地元の学校である、夜見山北中学校に転向してきました。
恒一の所属するクラス、3年3組は何かに怯えている様な雰囲気があり、言いようのない違和感を覚えたのです。
恒一は、クラスメイトで不思議な存在感を持つ少女・見崎鳴に惹かれていきます。
しかし、クラスメイトの反応から、彼女は恒一には見えているのですが、他のクラスメイトには見えていないのでは無いかと感じるようになります。
そんなある日、あるクラスメイトが異常な死を遂げ、3年3組が昔から直面している現象を知らされることになるのです。
■登場人物についての印象
このお話のメインキャスターの2人に私が抱いた印象です
・榊原 恒一(さかきばら こういち)
病弱ですが、非常に落ち着いた印象のあるキャラクターです。
綾辻氏が何を思ってのことかはわからないのですが、榊原という苗字から連想される、実際に過去に起こっている事件を思い起こさせるシーンがあります。
個人的には当時のことを思い出してしまったこともあり、そこまで言及する必要があったのか?というのは疑問でした。
・見崎 鳴(みさき めい)
不思議な少女という印象です。初めて登場したときからの雰囲気をずっと貫きとおすのかと思ったのですが、お話が進むにつれて、だんだんと普通の中学生らしさを出してくる感じを受けました。
実在しない幽霊的存在を思わせるキャラクターだったのですが、印象がお話とともに変化しますね。
■お話の理解のための用語
お話を読み進めるにつれて、だんだんとインプットされてくると思いますが、独特のキーワードについてピックアップしておきたいと思います。
【夜見山現象】
夜見山北中学校3年3組で発生する、「死者」がクラスにまぎれこんでしまうという不可思議な現象。1972年のある生徒の死をきっかけに始まった。これに伴いクラスの人数が一人増えることになる。
【災厄】
夜見山現象によって、3年3組の親族を含めた関係者は「死」に引き込まれやすくなる。クラスの成員とその2親等以内の血縁者から、毎月1人以上が事故死、病死、自殺、他殺などさまざまな形で死んでゆく。
【ある年/ない年】
夜見山現象はランダムに発生し、現象の起こる年は「ある年」、起こらない年は「ない年」と呼ばれる。
【対策会議】
今年が「ある年」だった場合に備え、夜見山北中学校3年3組の担任と生徒たちであらかじめ対策を話し合う会議。
【いないもの】
増えた死者の代わりに、クラスの誰か1人を「いないもの」に設定するという対策がとられる。学校にいるあいだ、あたかもそこに「いないもの」として扱われる役割を担った生徒。まるでいじめを受けているかのように。
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■お話の展開
中学3年生の榊原恒一は、肺に持病を患っており、療養するため、祖父母と死んだ母の妹(怜子)が住んでい る夜見山市にやってきました。
入院中の病院で、左目に眼帯をした不思議な美少女(見崎鳴)と出会い ました。
恒一は5月に退院し、夜見山北中学に初登校すると、同じ3年3組には、病院で出会った少女(見崎鳴)がいました。
しかし、担任や他のクラスメイト達には、彼女が見えていないかのようです・・・
不思議に思った恒一が、クラス メイトにそのことを聞いてみると、話をはぐらかされます。
意を決して少女(見崎鳴)に話しかけたところ、クラスメイトからは「いない者の相手をするな」と不可解な忠告を受けます。
そしてある日、クラスのある女子が、階段から転げ落ちて死亡します。
クラスの中では、 「ルールを破ったからだ」との声が囁かれます。
この事故を境に、恒一がクラスメイトに話しかけても誰も反応しなくなりました。
クラスを巡る死の連鎖現象に対して誰かを「いない者」として扱うルールがあるという。
恒一は、鳴から夜見山北中学3年3組を巡るある現象を聞かされます。
※ ※ ※
今から26年前、3年3組で「ミサキ」 という人気者の生徒が亡くなりました。
クラスメイトはその死を受け入れられず、死んだ「ミサキ」をまるで生きているかのように扱い、学校生活を過ごしました。
そんな中、不思議なことが起きました。
卒業式の集合写真に死んだはずの「ミサキ」が写っていたのです。
それ以降3年3組という「場」が、死に近づいてしまい、現象が起こるようになったのです。
死んだはずの人間が復活して、誰にも気づかれずにクラ スの一員に紛れ込んでいる・・・
その影響で、3年3組の親族を含めた関係者が次々と死んでいく のです。
ある年、阻止する 方法が見つかりました。それはクラスの中の1人を「いない者」として扱うのです。
なぜかというと、その方法を実施することで卒業まで無事で過 ごせた年があったからです。
今年は、クラスメイト達は、鳴を「いない者」として扱っていたのでした。
転校してきたときに何も事情を知らない恒一が、いない者とされていた鳴に話しかけるという、ルールを破ってしまったことが、クラスメイトの女子の死を引き起こした・・・
クラスメイト達は話し合い、恒一を2人目 の「いない者」として扱えば、死の連鎖を止めることができると考えたのです。
なかなか理不尽さを感じる展開ですが、現象を間近に感じる3年3組の必死なルール順守にかなりの緊迫感を感じました。
その後は、過去に隠されてきたいくつかの事実が分かり始め、さらにこの物語の深さを感じることができます。どっぷりとはまっていただけたらと思います。
■続編として発表
このanotherの続編として anotherエピソードS、another2001が発表されています。
この先是非、読み進めていこうと思っている為、詳細はまだつかんでいませんが、早めに入手したいと思っています。
館シリーズとはまた異なった綾辻世界感をじっくり感じることができましたので、このanotherシリーズもしっかりと楽しんでいきたいですね。
合わせて、アニメ化、映画化がされているので平行して拝見しました。
独特の緊迫感がよく表現されており、それぞれ楽しめる作品でした。
でもやはり原作を読んでからの視聴をお勧めします。
特に映画については、はじめてこのお話に触れる方にはなかなか理解が難しいのかな?と感じました。
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