読書-Harinezumiの生活

読書好きな自分(読書垢)が読んで本で伝えたいことなどを書いていきたいと思います!

赤い砂|執念の刑事が追い求める感染症の真実

赤い砂

真実を求める刑事のみごとな執念

伊岡先生が実はデビュー前に書かれていたという作品です。

発表されたタイミングにまどわされることなく、この作品の意図するところを汲み取らなければいけません!私はそう思いました。

ここ数年で人々が非常に敏感にとらえるようになったであろう「感染症」という題材ではあるものの、そこには一人の刑事の執念が導き出す壮大なお話があります。

どんなお話にも必ず人が関わります。そして、人の邪悪な考えが状況を一層ひどくする・・・

でも、それを解明して正そうそする意識や行動を起こす人がいるからこそ、この世の中の平穏は保たれていると言えるのではないでしょうか・・・

 

■赤い砂のあらすじ

疑惑

国立疾病病理管理センターの阿久津という者が突然電車に飛び込み自殺した。

その2週間後、阿久津が激突した電車の運転手である早山という者が車に飛び込み自殺・・・

さらに、現場検証を行った警視庁の鑑識係である工藤という者が同じ課の山崎から拳銃を奪い、自分の頭を打ち抜き自殺。

それから2週間後、山崎が飛び降り自殺を・・・

不自然に続く自殺の連鎖はなぜ起こってしまったのか?

鑑識係の工藤の友人である永瀬刑事は、工藤には幸せな家族がおり自殺する理由など無かったはずと疑心を抱く。

永瀬が事件の真相を追う中、大手製薬会社に脅迫状が届く「赤い砂を償え」と・・・

国立疾病管理センター職員、鑑識係、電車の運転士、交通課の警察官4人の死の共通点は?「突然錯乱し、場合によっては他者を傷つけ、最後は自殺する」こと。

彼らに何が起きたのか・・・

そしてついに永瀬刑事の執念が真実を暴く!

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■感染症(ウィルス)を題材にする

ウィルス

この物語は以下の三部構成になっています。

第一部 感染《二〇〇〇年七月》
第二部 潜伏《二〇〇三年七月》
第三部 発症《二〇〇三年八月》

ストーリーの展開をウィルスが引き起こす局面現象の順番に当てはめています。

最後の発症に向けてじわじわと状況が変化していく様がうまくあらわされていると感じました。

ここ数年は新型コロナが突如蔓延し、世界中に脅威をもたらすという歴史的にも異質な現象が起こりました。

私たちの生活の中にも今まで考えもしなかった影響が生じ、行動や習慣そのものが変化してしまうという状態にもなりました。

それだけにこのストーリー展開がとても身近に感じられたことは事実です。

しかしながら、このお話の中ではコロナという感染症が蔓延したからこそ周知されたキーワードを一切使っていないという事実があります。(クラスターとか)

それが伊岡先生のこだわりでもあったということを耳にしました。

この作品はあくまでもデビュー以前に書かれたものであり(2003年)、世の中がコロナに脅かされているタイミングだから書いた作品というわけではないことを主張したのですね。

伊岡先生はこの作品の学術的な裏付けのために、様々な勉強を時間をかけてされてきたと思います。

決して流行に追随した作品ではないと主張することは当然であるという感じがしました。

 

■感想

真実

熱血刑事が自己行動の歯止めをかけられずに謹慎処分になる場面は多々あるものの、友人のために命がけで奔走する若き刑事の、人間臭い熱き物語なのです。

そして関係者の一人として登場してくる有沢美由紀の存在もこの物語には欠かせない人となりました。

人としての大切な部分を失わない2人がクローズアップされる終盤が読んでいた立場としても非常に嬉しい気持ちにさせられました。

物語は、ある意味余韻を持たせながら終わってしまう感じもありますが、それがベストな形だったのではないでしょうか?

心が汚れた多数の登場人物がその後社会的制裁を受けるであろう場面は読者個々人がいかようにでも想像すればいいのですから・・・・

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