

人事という仕事柄「残業」は日常的に向き合うテーマです。
36協定、残業時間の集計、是正指導、管理職への注意喚起など。
制度や数値としての残業管理は、私にとってはある意味“慣れた業務”になっています。
一方で、心のどこかにずっと引っかかっていた感覚もありました。
「本当にこれで良いのだろうか?」
「残業を減らすこと自体が目的になっていないか?」
そんなときに手に取ったのが、この「深夜残業」という作品です。
職業柄ではありますが、ビジネス書ではなく“小説”という形で残業問題を描いている点に、強く惹かれました。
- 『深夜残業』のあらすじと作品の印象(ネタバレ控えめ)
- 「残業時間を減らす」ことへの違和感
- 残業の本質は「仕事の量」にあると改めて気づかされる
- 印象に残った一文
- 当たり前のことを、改めて振り返る機会になった
- 『深夜残業』は人事こそ読むべき一冊
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『深夜残業』のあらすじと作品の印象(ネタバレ控えめ)

この作品は、ごく一般的な企業(おせんべいの製造販売会社です)を舞台に、残業が常態化した職場の姿を描いた小説です。
物語に登場するのは、
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仕事に真面目に向き合う社
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実態の仕事と制度の狭間で揺れる立場の人たち
いずれも「どこかで見たことがある」と感じてしまう人物像ばかりです。
極端な悪役が出てくるわけでもなく、誰か一人が明確に間違っているわけでもない。(立場によってみんな正しい考えがある)
その点が、この作品を非常に現実的なものにしています。
職場では、
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忙しくて仕事が終わらない!
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どうして残業することがいけないのか?
そんな考えが自然にあり、日常で残業することが当然のこととなっていました。
この状態は、人事として多くの職場を見てきた私の立場からすると、決して言い過ぎではなく、むしろ「よくある光景」だと感じました。
また印象的なのは、根底にある考え方として、誰も最初から長時間残業を望んでいないという点です。
効率化を考えていないわけでもなく、サボっているわけでもない。
それでも仕事は減らず、時間だけが延びていく・・・
この構造が、淡々と、しかし丁寧に描かれています。
これがビジネス書であれば「原因→対策→結論」と整理されるところを、本作では“人の感情”や“職場の空気”として体感させてくれます。
そのため読み進めるうちに、「これは物語ではあるけれど、自分の会社でも起きていることだ!」そんな感覚を覚える方も多いのではないでしょうか。
残業問題を扱いながらも、説教くささはなく、むしろ静かに、じわじわと問いを投げかけてくる。それが『深夜残業』という作品全体の印象でした。
「残業時間を減らす」ことへの違和感

残業是正というと、まず第一に考えてしまうことが「残業時間を減らす」ということ。
打刻を厳しくする、申請を必須にする、上限を超えたら注意するなどなど・・・
この物語でも、ノー残業デーにいかに退勤の打刻を速くするかという部門対抗「残業禁止コンテスト」なるものが導入され非常にコミカルに描かれています。
このような施策を楽しんで読み進めながらも、改めて強く感じたのは次の点でした。
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時間だけを管理しても、仕事は減らない
-
仕事が減らなければ、歪みは別の形で表に出る
人事としても「分かっているつもり」だったこの事実を、物語は素直に容赦なく突きつけてくるのです。
残業の本質は「仕事の量」にあると改めて気づかされる
本作を通して改めて気付かされるのは、残業の本質は“残業時間”ではなく“仕事の量”にあるという点です。
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なぜこの仕事は、この人に集中しているのか?
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本当に今やるべき仕事なのか?
-
そもそも、この業務は必要なのか?
こうした問いが置き去りにされたまま、「今日は何時まで残業したか」だけが管理されている実態。
これは、現実の職場でもよく見られる状況ではないでしょうか。仕事の総量にメスを入れない限り、残業は形を変えて続いていく。小説を読みながら、その当たり前の事実を改めて噛みしめました。
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印象に残った一文
ただし、作品中の次の表現にも今まで考えたことが無かった気付きを与えてくれたことも事実です。
「残業は誰のためにするのか?そして残業はなぜ減らさなくてはいけないのか?」
この一文は、本作の中でも特に印象的でした。
そして同時に、人事として自分自身に突きつけられた問いでもあります。
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会社のためか?
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上司のためか?
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自分の評価のためか?
そして、
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なぜ残業を減らすのか?
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法律を守るためだけなのか?
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数字を良く見せるためなのか?
この問いに即答できなかった自分にとって、本当に考えるべき解を教えてもらったような気がしています。(これは是非読んで確認していただけると嬉しいです)
当たり前のことを、改めて振り返る機会になった
『深夜残業』を読んで感じたのは、「新しい知識」を得たというより、当たり前のことを思い出させてもらったという感覚です。
忙しさの中で、つい後回しにしてしまう大切な視点を、物語は静かに差し出してくれました。
人事の立場として改めて感じたのは、制度を整えるだけでは残業は減らないという事実です。
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現場で何が起きているのかを知ること
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管理職と一緒に仕事の量を見直すこと
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「減らせ」と言う前に「減らせる構造」を作ること
これらに本気で向き合わなければ、残業問題は解決しません。『深夜残業』は、その大切な考え方を問いかけてくれる一冊だと感じました。
『深夜残業』は人事こそ読むべき一冊

この作品は、残業に悩む現場の人だけでなく、人事・管理職こそ読むべき作品だと思いました。
いろんなビジネス書がある世の中ですが、このような物語を通じて感じ取ってもらえることもたくさんあるような気がします。
数字や制度の裏側で、何が起きているのか。
そして、自分はその構造にどう向き合っていかなければいけないのか。
読み終えた後、すぐに答えは出ないと思いますが、心の中に残る問いが、これからの仕事の向き合い方を少しずつ変えてくれるのではないでしょうか。
もう一度改めて「残業とは何か」を考えたい方に、ぜひ手に取ってほしい一冊です。
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