かなり以前(若い時)に読んだ記憶が頭の隅になぜか残っていました。
恐らくタイトルそのものにインパクトがあったので、ずっと記憶にも残っていたのだと思います。
しかし、話の内容は全く思い出せないままでした・・・
書店に出向いて時々西村京太郎先生のコーナーをざっと見るのですが、どうしてもこの「一千万人誘拐計画」というタイトルは探すことができないままでした。
しかし今回たまたま、探し出すことができ、そして譲り受けることができたため、念願かなっての再読となりました。
そんなこともあってなのか自分にとっての西村京太郎先生は有名なトラベルミステリーというよりもどうしても短編集になじみがあるのです。
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■一千万人誘拐計画という短編集
昭和58年(1983年)に角川文庫から発行されている短編集「一千万人誘拐計画」には以下の5つの短編が収録されています
・受験地獄
・第二の標的
・一千万人誘拐計画
・白い殉教者
・天国に近い死体
この中でも私の頭からずっと記憶が消えることがなかった「一千万人誘拐計画」について紹介します。
実はこのお話が短編であることすら忘れてしまっていました。
作品自体は1979年に発表されていたようです。
【一千万人誘拐計画のあらすじ】
ある日、東京都知事あてに謎の男から電話が入ります。
「私は東京都民一千万人を誘拐する計画をたてた。身代金として十億円を要求する。」と・・・
その電話に対応した都知事の秘書室長日高はまともに取り合うことはしなかったのです。
しかし最初はいたずらだと思っていた日高も、電話の主が予告していたとおりに都民が殺害されるにつれ、本気だと認めざるを得なくなったのです。
秘書室から連絡を受けて捜査にのりだしたのは、西村京太郎作品の中ではおなじみであるあの十津川刑事。
息の詰まるような緊迫感の中で、犯人と巧みな頭脳戦を繰り広げるのでした・・・
十津川刑事の作戦とは!!!
■単純明快で実に面白い
まずは、東京都民一千万人を誘拐する計画という発想が実におもしろい!と感じます。
誰がこんな事思いつくでしょうか?
爆破予告やテロなど明確に被害をうける人を特定したお話はよくあるかと思います。
しかしこのお話のように誘拐される予定の一千万人は対象が誰なのか?もわからず、そして被害を受ける当人も自覚がないまま誘拐された扱いされるという・・・
つまりは犯人が自己主張をする以上のことはない状態なのです。
それでも、犯人からの身代金の要求に応じない事態が続くと、予告通りに殺人事件が生じてしまうため、だんだんと、犯人の主張を認めざるを得ない状況になってくるのです。
西村先生のこの発想力に脱帽です。
今から40年以上も前にこのような驚きを与えてくれる作品を残してくれたことに感謝したいですね。
■十津川刑事の鮮やかな罠
このお話の最大の魅力は、壮大な誘拐計画という発想力はもちろんのこと、その事件に対して解決を見出す十津川刑事の鮮やかな犯人をあざむく術です。
ある意味合法ではないのかもしれませんが、犯人の性格的な特徴を良くとらえた上での心理戦に持ち込むところは読んでいて鮮やかさを感じさせてくれます。
非常にクールで冷静な十津川刑事の魅力も良く出ている場面でした。
ページ数にして約43ページという短いお話ではあるものの、気持ちも引き込まれるし十分に楽しめる作品だと言えます。
このお話を再読することができて本当に良かったと感じています。
是非一度読んでみることをお勧めします。
せっかく入手できたので今後も大事に保管して、時々楽しみたいと思っています。
その他の短編作品についても、それぞれが独特のストーリー展開で楽しむことができます。
もう一人、徳大寺京介という不思議な切れ者が登場してくるのですが、なかなかにインパクトのある人物でした。
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