恋は罪悪ですよ?
人間を信用せず、豊富な知識を持ちながら仕事にも就かず、美しい妻と隠居生活を送る「先生」には、人には言えない暗い過去があった。ある日「先生」の不思議な魅力に惹かれていた「私」のもとに突然、一通の遺書が届く。遺書が物語る「先生」の壮絶な過去とは?日本文学史に輝く文豪・夏目漱石が人間のエゴイズムに迫った名作を漫画化。
文豪、夏目漱石の代表作「こころ」
実は今まで夏目漱石をきちんと読んだことがありませんでした。以前古書である程度の代表作品集を手に入れているのですが、眺めているだけでなかなか手がついていません・・・そんな中、この本を手に取りました。原本を読む前にこのようなまんが化されたものを読んでしまうのは反則か・・・と一瞬悩んだのですが、読み終わった時には、読んで良かった!と素直に感じてしまいました。
「先生」と「K」という人物が「静」という女性をめぐって、それぞれ自分の気持ちを探り合いながら物語は進んでいきます。そして最後は悲劇を生むことになります。人に対する気持ちの真剣さが現代に比べてもっと重たかったと感じさせられる内容です。
このお話を小説で読んだとしたら、この感じを味わえただろうか?と少し疑問に思ってしまいます。まんが化してくれたからこそ伝わってきたのかもしれません。私の夏目漱石に対する印象も変わりました。「坊ちゃん」や「吾輩は猫である」というような少し教科書的な作品をイメージしていたのですが、この「こころ」のような人間のドロドロとした感情面をうまく表現しているような作品もあるのですね・・・
私の好きなビブリア古書堂の事件手帳でも「それから」を題材にしたお話が出てきます。この後の人生の時間で、夏目漱石にもゆっくり触れていきたいと思います。