地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落ちる「蜘蛛の糸」。大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福をみつけた「杜子春」。魔法使いが神の裁きを受ける神秘的な「アグニの神」。少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。
子供のころに学校の教科書で読んだことがあるなと思い返す芥川龍之介・・もしくはNHK教育番組で時々やっていた人形劇などで杜子春などがとりあげられていた淡い記憶もあります・・・でも大人になってからしっかりと読む機会が持てていなかったので、これではいかんと思い、手に取ることにしました。短編として以下の作品が収録されています。
蜘蛛の糸
犬と笛
蜜柑
魔術
杜子春
アグニの神
トロッコ
仙人
猿蟹合戦
白
有名な作品としては「蜘蛛の糸」や「杜子春」あたりかと思うのですが、そのほかの作品で自分の印象に残ったものは「蜜柑」「トロッコ」でしょうか。
「蜜柑」はすごく短い作品ですが、幼い姉が奉公に出向く時に、幼い弟たちに向けた行為がとてもほっこりと感じることができる不思議な内容です。「トロッコ」ではトロッコに興味を持った少年が大人にくっついてトロッコに乗って行動するのですが、だんだんと遠くに来てしまったという不安感、帰りたい・・という気持ちの変化が描かれていています。自分の子供の頃を思い返してみると、このような感情はわかるなあと思わせてくれるような内容です。
いわゆる有名な作品以外にもこんな作品もあったのか!と嬉しい気付きを与えてくれます。さすが賞の名称にも使われている文豪ですね!